細胞の育て方、再生医療のキッチンをのぞいてみよう
再生医療で使う細胞は、どうやって準備されるのでしょうか。そのプロセスは、まるでシェフが特別な料理を作る手順によく似ています。まず、材料の仕入れです。患者さんの血液や皮膚、脂肪などをほんの少しだけ採取します。これが、全ての元となる「食材」です。次に、調理場となる「細胞培養加工室(CPC)」へ運びます。この部屋は、ホコリや細菌が一切ないように厳しく管理された、超清潔なキッチンです。ここで働く研究者は、宇宙服のようなクリーンスーツを着て作業します。採取した食材の中から、目的の幹細胞だけを丁寧に取り出し、「培養皿」という特殊なお皿に移します。そして、細胞にとってのごちそうである「培養液」という栄養たっぷりのスープを注ぎます。このスープには、細胞が元気に増えるために必要なアミノ酸やビタミン、成長を促す成分などが絶妙なバランスで配合されています。お皿は「インキュベーター」という、人間の体の中と同じ温度と湿度に保たれた保温庫に入れられます。この温かい環境で、細胞は分裂を繰り返してどんどん数を増やしていきます。いわば、食材をじっくりと熟成させる工程です。そして、ある程度数が増えたら、次のステップに進みます。例えばiPS細胞なら、「心臓の筋肉になれ」「神経細胞になれ」といった特別な指令を与える物質をスープに加えます。すると細胞たちは、その指令に従って目的の細胞へと変身していくのです。これはレシピに従って食材を調理する工程です。最後に、できあがった細胞を注射器に入れたり、特殊な技術でシート状に加工したりして、患者さんの元へ届けられる「料理」が完成します。