再生医療の技術がさらに発展し、私たちの生活に溶け込んだ未来は、どのようなものになるのでしょうか。少し先の未来を想像してみましょう。まず、健康診断の時に採血するのと同じくらい当たり前に、自分の皮膚や血液からiPS細胞を作り、「細胞バンク」に預けておくのが一般的になるかもしれません。これは、いわば自分の体の「バックアップデータ」です。そして将来、もし病気やケガで体のどこかの機能が損なわれても、慌てる必要はありません。バンクに預けておいた若い頃の元気な細胞を引き出し、そこから必要な臓器のパーツ、例えば心臓の筋肉や肝臓、腎臓などをオーダーメイドで作り出して、古くなった部品と交換するのです。これにより、多くの人が健康で活動的な時間を長く過ごせる「健康寿命」が、飛躍的に延びる可能性があります。また、治療だけでなく、病気の予防や新薬の開発も大きく変わります。例えば、ある病気になりやすい遺伝子を持つ人のiPS細胞から、その病気特有の細胞やミニ臓器を研究室で再現します。そして、それに様々な薬の候補を試すことで、副作用なく最も効果的な薬を、病気が発症する前に見つけ出すことができるようになります。これは、いわば自分の分身である「アバター」で薬のシミュレーションをするようなものです。再生医療は、単に病気を治すだけでなく、病気そのものを過去のものにし、人々が年齢を重ねることを恐れずに、いつまでも自分らしく輝ける社会を実現するための、強力な鍵となるに違いありません。