心臓再生医療で用いられる細胞(ソース)には複数の選択肢があり、それぞれが一長一短です。そのため、患者さんの病状や治療の目的に応じて最適な細胞を選ぶことが重要になります。現在、保険診療で実績があるのは、患者自身の太ももから採取する「自己骨格芽細胞」です。最大の長所は、自分の細胞であるため免疫拒絶反応がなく、がん化のリスクも極めて低いという安全性の高さです。しかし、心筋細胞そのものにはならないため、効果はパラクライン効果に限定され、劇的な機能回復は期待しにくい側面があります。次に研究が進んでいるのが、骨髄や脂肪組織に存在する「間葉系幹細胞」です。これも自己細胞を使えるため安全性が高く、比較的容易に採取できます。骨格芽細胞と同様にパラクライン効果が主な作用機序ですが、より強力な抗炎症作用や免疫調節作用を持つとされ、心筋梗塞の急性期などでの応用が期待されています。そして、究極の細胞ソースとして期待されるのが「iPS細胞」です。心筋細胞そのものを無限に作り出せるため、失われた組織を直接補充し、ポンプ機能を根本から回復させる可能性があります。しかし、未分化細胞の混入による腫瘍形成リスクや、移植した心筋細胞が不整脈の原因となる可能性など、安全性の担保に課題が残ります。また、自己のiPS細胞を用いる自家移植は、作製に時間とコストがかかるため、あらかじめ作製・備蓄された他人のiPS細胞を用いる「他家移植」が主流になると考えられていますが、その場合は程度の差こそあれ免疫抑制剤が必要になります。安全性と効果、コストと時間、自家と他家。これらの要素を総合的に評価し、個々の患者にとって最適な細胞ソースを選択していくことが、今後の心臓再生医療の普及と発展の鍵を握っているのです。