再生医療症例集

医療
  • 研究室から手術室へ、心臓再生医療の道のり

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    一つの心臓再生医療技術が、研究室のシャーレから患者さんが待つ手術室へと届けられるまでには、長く険しい道のりが存在します。その旅は、まず「基礎研究」の段階から始まります。研究者たちは、どの細胞が心臓再生に最も適しているか、どのように培養すれば安全で高品質な細胞を大量に作れるか、といった根本的な問いに、何年もかけて答えを探します。次に、その有望なシーズ(種)を動物で試す「前臨床試験」の段階へと移行します。マウスやラットなどの小動物で基本的な有効性と安全性を確認した後、ブタなどの大型動物を用いて、ヒトの心臓に近いサイズや生理機能で、治療が本当に機能するのか、長期的な安全性に問題はないかを徹底的に検証します。この厳しい試験をクリアして初めて、ヒトへの応用である「臨床研究・治験」の扉が開かれます。治験は通常、3つのステップで進められます。まずは少数の患者さんで安全性を最優先に確認する第I相試験、次により多くの患者さんで有効性の目安と最適な投与法を探る第II相試験、そして最終的に、既存の標準治療などと比較して優位性を証明するための大規模な第III相試験です。この全プロセスには、科学的な妥当性だけでなく、患者さんの人権と安全を守るための厳格な倫理審査が伴います。全ての治験データをまとめ、国の医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請を行い、その厳しい審査を通過して、ようやく「医薬品」や「医療機器」として国の承認を得て、保険診療として広く使われる医療となるのです。一つの治療法の確立の裏には、研究者の絶え間ない努力と、未来の医療のために勇気ある一歩を踏み出してくれた治験参加者の方々の尊い貢献が隠されています。