知識
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トカゲの尻尾に学ぶ再生医療の基本
トカゲは敵に襲われると尻尾を切り離して逃げますが、しばらくするとまた新しい尻尾が生えてきます。これはトカゲが持っている「再生する力」のおかげです。実は人間にも、ケガをしてもかさぶたができて皮膚が元に戻ったり、骨折しても骨がくっついたりする、同じような再生能力が備わっています。再生医療とは、この人間が本来持っている「元に戻る力」を最大限に引き出して、病気やケガで失われてしまった体の機能を取り戻そうという、新しい医療の考え方です。これまでの医療を家の修理に例えるなら、薬は雨漏りを一時的に止める補修テープ、手術は壊れた柱を金属のプレートで補強するようなものでした。しかし再生医療は、腐ってしまった柱そのものを、新品の木材に取り替えてしまうようなイメージです。その取り替え用の部品となるのが、私たちの体の中にある「幹細胞」という特別な細胞です。普通の細胞が皮膚なら皮膚、筋肉なら筋肉と自分の役割が決まっているのに対し、幹細胞は色々な種類の細胞に変化できる「変身能力」と、自分と同じ細胞をコピーして増える「分身能力」を持っています。この何にでもなれるスーパー細胞を使って、ダメになってしまった体のパーツを作り出し、元の元気な状態に戻してあげようというのが、再生医療の基本的な仕組みなのです。これは、症状を抑えるのではなく、原因そのものを根本から治療する可能性を秘めた、未来の医療の大きな柱と言えるでしょう。