自分の細胞?他人の細胞?治療法の違い
再生医療には、大きく分けて二つの方法があります。一つは、患者さん自身の細胞を使う「自家移植」です。もう一つは、健康な他の人(ドナー)から提供された細胞を使う「他家移植」です。この二つには、それぞれ良い点と注意すべき点があります。自家移植の最大のメリットは、何といっても安全性が高いことです。自分の体の一部から作った細胞なので、移植しても体が「異物だ!」と判断して攻撃する「拒絶反応」がほとんど起こりません。自分の家の鍵穴に、自分の鍵を差し込むようなもので、ピッタリと合います。そのため、免疫の働きを抑える免疫抑制剤という薬を使う必要がなく、体への負担が少なくて済みます。まさに究極のオーダーメイド治療と言えるでしょう。しかし、デメリットもあります。それは、治療の準備に時間がかかることです。患者さんから細胞を採取し、それを培養して治療に必要な数まで増やすのには、数週間から数ヶ月かかる場合があります。また、一人ひとりのために細胞を育てるため、どうしても費用が高額になりがちです。一方、他家移植は、あらかじめドナーから細胞をもらって大量に培養し、品質をチェックした上で「細胞バンク」として冷凍保存しておくことができます。怪我をしたらすぐに貼れる絆創膏のように、必要な時にすぐ患者さんへ届けることができる「既製品(オフ・ザ・シェルフ)」です。これにより、治療までの時間を大幅に短縮でき、コストも抑えられます。ただし、他人の細胞なので、どうしても拒絶反応のリスクがあり、免疫抑制剤が必要になる場合があります。どちらの方法が良いかは、病気の種類や緊急性によって異なり、それぞれの特徴を活かした治療法の開発が進められています。